「ヨコハマ文芸」感想と質問



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[36] (無題)

投稿者: 加納八郎 投稿日:2021年 3月16日(火)21時18分30秒 h175-177-040-172.catv02.itscom.jp  通報   返信・引用

   温かくなりました。庭前の桜もあと数日で咲きそうです。

 『ヨコハマ文芸』の会員は、おとなしい人が多いのか、折角「感想と質問」のページがあっても、折山正武さんと中生加康夫さん以外は書く人がいない。私は強心臓を発揮して(本当は、心臓は弱い)書いてみたい。第5号を読んで、一週間あまりが過ぎたので、まだ印象に残っている作品だけに限らせていただきます。私の偏見と独断によるものなので、あまり深刻に考えないで頂きたい。私は読みながら、印象の強いものに〇をつけていきました。

 まず、敬服した作品はエッセーの「まり子ちゃんの子守唄」(作者名は省く)、「古都 奥州平泉」、「ハマのメリーさん列伝」、かながわ文学碑めぐりの「佐佐木信綱歌碑」、「尾崎士郎 文学碑と墓碑」、「徳富蘆花 不如帰の碑」の六点。いずれも写真と共に永久保存版にしたくなる労作である。これらの一作を読んだだけでも五〇〇円の価値はあると思う。

 あとはおまけだがその中にもいいものがある。小説の「忘れていたこと」。この作者は創刊号でもいいものを書いたが、ただ一点、気になる事がなくはない。娘との確執である。創刊号にもそれがあって、それが作品の肝でもあったのだが、男親にとって娘は最愛であるはずで、そこにどうリアリテイをつけるか、凡人には難解な箇所である。娘のステータスが高すぎるのか、それとも娘離れ、子離れを果たしてないのか、そのへんのところを精神病理的に、いや医学的に解説していただくと私のような者には勉強になる。「天田が現実と異なる思弁ばかり述べる度に、時限爆弾のタイマーが前に進んだ」(52p)の気持、私にもよく分かる。教育現場でよく発生する。この作者の作品に、酒は欠かせないか。感動場面を盛り上げるこの作者の手法に学びたい。

 そのほかに、小説で面白いと思ったのは「お嫁さんがころんだ」である。破天荒な(?)お嫁さんと物わかりの良すぎる(?)姑との結末はどうなるのか、次号が待たれる。海外生活の描写も楽しい。もっと入れて欲しい。

 次に「アイル・フォーロ-・ザ・サン」も力作だと思うし、ビートルズの音楽の力の偉大さも分かるが、ただ一点、作者の思い違いがあるので、デイサービスに通っている者として、異議を申しておきたい。作中にある「毎日見る入所者達の諦めきったような目の色とため息」(75p)、「人生を見限ってしまったような目をして」(76p)、「世の中から見捨てられたような寂しい不安は・・」(79p)、「何よりも、自分と入所の人達の諦めと不安の場所」(81p)等々あるが、それは作者の見識であって、入所者の気持ちではない。彼ら、彼女らは決して人生を諦めているのではなく、一日、一日元気に生きたい、少しでも楽しく生きたい、家族やまわりに迷惑を掛けたくない、そういう願望の表れとして、わざわざお金をかけてデイサービスに行っているのであり、介護施設に入っているのである。そこには整体施術や器械運動があり、歌を歌ったり、碁を打ったり、ダンスをしたり、お茶を飲んだり、何より人がいる、友人ができる。女性達は、休憩時間はひっきりなしに会話を楽しんでいる。活き活きしている。決して人生を諦めているのではない。
彼ら、彼女らも音楽は昔から好きであったし、不慣れなビートルズであっても楽しく聞けるのである。それが音楽の力であり、彼ら、彼女らの心の音楽を呼び覚ますのであって、楽しさはゼロから始まったのではなく、元々あるものを喚起されたのである。萎れかかった植木に水をかけるようなものだ。植木は生きる事を諦めているのではなく、いい空気や水を求めているのであって、生きる欲求は十分保っている。デイサービスのモットーは自分で出来ることは自分でしよう、であり、皆せっせとやっている。そこに喜びがあり、希望がある。デイサービスを卒業して、家で元気にやっている人もいる。私もこれまでは週二回であったが、いまは一回にしている。おそらく作者は五体満足で、重い病気などされた事がないのかも知れない。別に咎める訳ではない。作者の筆力は大したものだと思う。

 「八丈島慕情」も年季の入った優れた時代小説であると思うし、敬意を表するところであるが、導入部が簡単すぎないか。この作者の作品は毎回それを感じる。誰を対象に作品を書くのか。三浦しおんなどは導入部を繰りかえし繰りかえし、ゆっくり書いて、読者へのサービスだなと感じさせるし、今回直木賞の「心淋し川」も丁寧に書いている。「我が輩は猫である」と言えば猫を擬人化しているのだなとすぐ分かる。入りやすい。骨格となるもの、時と場所と主人公を読者に掴ませる努力がまず、必要ではないか。ミステリーものならいざ知らず、時代物はそれらをはじめにはっきりさせた方がいいのではないか、読者は作者の十分の一も予備知識はない。中身が重厚なだけに惜しいと感じている。失敬ないい方か。

 短編で凄い作品は「大震災の衝撃今なお」であろう。これも永久保存版である。あと、「イオマンテの夜」、「ダニーボーイ」、母の涙」、「五つのハーモニー」が面白いと思った。「母の涙」の作者には小説を書いてもらいたい。いい私小説が書けるのではないか。

 近況心境の秀作は「葉陰のばら」、「教官の涙」、「新しい生活様式」など美しい作品の数々である。何と「浮遊ミカン」は笑いが止まらないほどの傑作ではないか。まだまだ書いてほしい。そして、「明治のヨコハマ文芸」の調査能力に感激して、表紙絵に頭を垂れ、韻文では巻頭歌「核と故郷」の時機を得た秀作に驚き、「カヌレ売る店」に同類の涙を禁じ得なかった。俳句は「浮かれ猫」の“旅立つや菜の花レシピ忍ばせり”は涙もろい私の涙腺を刺激した。

 そして、最後に、自著紹介では「八十八年目の機嫌」を上げない訳にはいかない。「誰かが触った」よりも、「石のニンフ達」よりも数段優れている。芥川賞作家ここにありで、この作家の経験と知見が充満している。感激ひとしおであった。作者の創作の秘密も垣間見える。牧野薊氏の作品がないのは淋しい。お元気であられるか。

 此処に書かれた方は是非一言感想なり、反論なりをお願いしたい。時間とスペースがあればほかの作品にも触れたいのだが。書きすぎてもいけないね。
21,3,11 加納

 上の文を書いて、載せていいか、どうかためらっていた。自作を送った人から長短いろいろな感想があって、嬉しいやら、顔をしかめたいやらしたが、どんなことを言われても、反応がないよりはあった方がいい。そう思い返して載せることにする。物議を醸すかも知れないが、まあ、いいことにしよう。その方が、『ヨコハマ文芸』の発展のためにいいかも知れない。行き届かない文であるが、他意は無し。
    21/3/16 加納

 東雲哲哉氏の文章は今拝見した。感謝!


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